トリプトファン代謝
京都大学の名誉教授早石修博士が昨年逝去された.早石博士はトリプトファン代謝を研究し,酸素添加酵素を発見されました.
トリプトファンとは体内で生成することのできない必須アミノ酸の一つ.5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)という代謝物質を経て,強い抗ストレス作用を持つ『セロトニン』、睡眠ホルモン『メラトニン』、脂肪分解作用を持つ『ナイアシン』、また最近の研究でうつ病や双極性障害などとの関連が指摘されている『キヌレニン』など、人体の恒常性維持や健康維持に重要な役割を担っている様々な神経伝達物質やホルモン等の前駆体(原料)として利用されています。(http://www.human-sb.com/tryptophan/)
https://www.anshin-tsuhan.jp/drug_search/imageDrugIngredients/569_w280.png
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食品などから摂取したトリプトファンの、セロトニンやメラトニンへの合成経路は以下のようになります。トリプトファンの不足によって起こる脳内のセロトニンの不足は、男性よりも女性に起こりやすいとされています。女性の場合、生理周期の影響から、脳内で働くセロトニン神経が抑制されてしまう時期があり、その間、セロトニンの分泌が減少してしまうことが分かっています。
1. タンパク質を摂取(食品やサプリメントから)
↓
2. トリプトファン(必須アミノ酸)
↓
3. 5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)
↓
4. セロトニン(脳内物質、不足するとうつ病など)
↓
5. メラトニン(睡眠ホルモン)
早石先生は酵素トリプトファンが酸素分子を取り込んで酸化反応を起こすことを突き止め、生体酸化が脱水素反応に限られるという定説を覆しました。この酸素は酸素添加酵素(オキシゲナーゼ)と名付けられ、呼吸の仕組みの解明に貢献しました。