バイオニュース│DNA・ゲノム情報による医療・創薬の実現

医療関係者としてバイオ/DNA/ゲノム関連の最新の話題をとりあげます.学習/勉強が目的なので,新しい用語が現れたときにはその都度意味を確認していきます.

ドラッグ・リポジショニング

ドラッグ・リポジショニング(略称DR)とは特定の疾患に有効な治療薬から、別の疾患に有効な新たな薬効をみつけだすことです.

その例としてよく知られているのが勃起(ぼっき)不全(ED:Erectile Dysfunction)治療薬のバイアグラで、当初は冠動脈拡張作用をもつ狭心症治療薬として開発されたが、男性性器の勃起を促す作用のあることが確認され、新たに勃起抑制酵素の抑制と陰茎動脈の拡張作用をもつED治療薬として製品化された。また、サリドマイド睡眠薬として開発され、妊婦のつわり予防を目的に鎮静剤として消化薬に配合されたが、あざらし肢症などの先天性障害児が生まれる結果となり発売中止となった。しかしその後、ハンセン病に併発する皮膚炎や疼痛(とうつう)に薬効が認められたため、アメリカで販売が許可され、日本でも多発性骨髄腫(こつずいしゅ)の治療薬として再認可されている。

ドラッグ・リポジショニング(どらっぐりぽじしょにんぐ)とは - コトバンク

 

このドラッグ・リポジショニングが注目を浴びるようになった理由には,Eroomの法則というのがある.過去60年間の米国の創薬の歴史をたどってみると、研究開発費10億ドルあたりの認可された新薬の数が、9年ごとに半分に減ってきている、言い換えると、新薬開発コストが9年で倍々に増えているということだ。「半導体の集積密度は18〜24カ月で倍増する」というMoore(ムーア)の法則がある。これは、技術革新のすばらしさについての法則だ。これと反対で、困った法則だなぁということで、Mooreの逆をとってEroomの法則と名付けられた。(なかのとおるのええ加減でいきまっせ! (27) 困った法則「イールーム」 :日本医事新報社)

http://blogs.sciencemag.org/pipeline/wp-content/uploads/sites/2/2015/04/RD-trend.png

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ドラッグリポジショニングは,このEroomの法則の効率低下を改善するのに役立つ可能性があるとして注目を集めている.新薬の開発では、治験において副作用が認められ安全性が確保できなかったり、薬効として明確な体内動態を証明できないことも多い。しかし既存薬はヒトの体内動態も明らかで安全性も確認されており、作用をあらためて調べ直し、ほかの疾患治療薬として実用化できれば開発コストの削減にもつながる。

(ドラッグ・リポジショニング(どらっぐりぽじしょにんぐ)とは - コトバンク)